ペット衛生管理の豆知識:猫用ワクチン2

猫用ワクチン接種に関わる注意点

「うちの猫は完全室内飼いで外に出さないからワクチンなんて打たなくても大丈夫」と思っている飼い主さんもいるかもしれません。室内で飼っている猫は、もちろん外にいる猫より感染リスクは低くなりますが、絶対安全とは言い切れません。飼い主さんや家族が、外から室内にウイルスを運んでしまう可能性があるからです。コアワクチンのウイルスは感染力が強く、空気感染しますし、外で野良猫に触った手で家の猫を触ったりすれば、ウイルスは室内に持ち込まれます。そのため、室内飼育の場合でも、猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症の「3種混合」の接種が推奨されています。

外に出る猫には、3種混合ワクチンに猫白血病ウイルス感染症を加えた「4種混合」、さらに猫クラミジア感染症を加えた「5種混合」など、母猫や兄弟猫の感染状況、他猫との接触の有無、住んでいる地域や飼育環境を考慮して、どれを予防するかを動物病院で相談しましょう。

多頭飼育の場合、猫白血病ウイルス陽性の猫がいるのであれば、同じ家で飼っているすべて猫に猫白血病ワクチンを接種する必要があります。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)のワクチンについては、混合ではなく単独で接種する形になります。猫エイズは、外に出て感染猫との交尾や、ケンカで咬まれたりすることがなければ感染しませんし、接種後の副作用の報告もあり、扱っていない動物病院もあります。陽性猫との接触を避けて、感染を予防することが現実的かもしれません。

猫白血病ウイルス感染症や猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)については、検査キットもありますので、ワクチン接種前に動物病院で感染の有無を検査してもらった上で、それぞれの猫に接種するワクチンを決めることもできます。

なお、外で生まれた子猫を拾ったとき、鼻水や結膜炎で顔がぐちゃぐちゃになっていることがあると思います。このような子猫は、すでに猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルスに感染していることが多く、治ったように見えても、その後もウイルスのキャリア猫となります。ワクチンで発症を抑えることはできますが、加齢やストレスで免疫力が低下したとき、再度ウイルスが活性化してくることもありますので、シニア猫や、環境が変わるなどのストレスのかかる猫にこそ、是非ワクチン接種を定期的に続けましょう。

ペットショップやブリーダーから迎えた猫なのか、保護猫なのか、室内飼いか、外に出る猫か、1頭飼いか、多頭飼育か、などの情報を獣医師に伝え、ワクチネーションプログラムを組んでもらい、計画的に接種しましょう。

なかには、ワクチン接種後の副反応を心配している飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。でも副作用の起こる確率は、病気になって死んでしまう確率よりずっと低いんです。確かに、ワクチンを打つと、猫によっては体調が悪くなることもありますし、ごくまれには顔面が異常に腫れたりするなどの症状が出たり、アナフィラキシーショックを起こす場合がありますので、ワクチン接種後はしばらく様子を見守ってください。万が一を考えて、午前中にワクチン接種を受けておけば、何らかの副反応が出た場合、すぐ動物病院に相談できるので、安心です。また、ワクチン接種後は、激しい運動、シャンプーは避け、2~3日間は安静にしてください。

また、ほとんどのペット保険では、ワクチン接種にかかる費用は補償の対象外となっています。ワクチン接種は病気の治療ではなく、健康な状態で行う予防行為と解釈されているためです。一方で、多くのペット保険では、ワクチンを接種せずに、ワクチンで予防できる病気にかかった場合、その治療にかかる費用も補償の対象外となってしまいます(ワクチン接種をしたにも関わらず治療が必要になった場合は補償の対象となります。)感染して治療が必要になれば、その費用はワクチン接種の何倍もかかります。接種の費用や手間は、飼い主さんの負担となりますが、ワクチン代を惜しんで、最終的に高額な治療費が必要になってしまうようなことのないように、予防できる病気はしっかりと予防しておきましょう。

なお、ペットホテルなど、猫が集まる施設を利用する際などには、ワクチンの接種証明書が必要です。接種1年以内の証明書の提示を求められる場合が多いと思いますので、事前に利用施設へ確認しましょう。証明書はワクチン接種を受けた動物病院で発行してくれます。

ワクチンを接種しても感染症にかかることはありますが、ワクチン接種が感染症の発症予防、症状の軽減に大きな効果を発揮することは確かです。すべての病気がワクチンで予防できるわけではありませんが、ワクチンで予防できるものは、ワクチンを接種してしっかりと予防しましょう。

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