ペット衛生管理の豆知識:鳥インフルエンザの脅威

鳥インフルエンザウイルスも変異するから怖い!

鳥インフルエンザは鳥の病気。通常は鳥から人には感染しません。ではなぜそんなに恐れられているのか? なぜ1羽でも陽性になると養鶏場の鶏を全羽殺すのか? 今回は鳥インフルエンザのお話です。

ここ数年11月頃になると、「養鶏場で鳥インフルエンザが発生し、養鶏場の鶏を全羽殺処分した」というニュースが聞こえてきます。以前は毎年ではありませんでしたが、最近は毎年のように発生報告が聞かれるようになってきました。今年も 10月31日時点で、もうすでに 4道県4事例の養鶏場で鳥インフルエンザが発生し、約45.7万羽が殺処分の対象となっています。
養鶏場での高病原性鳥インフルエンザは、令和2年度 18県52事例、令和3年度 12道県25事例と発生が続き、令和4年度は 26道県84事例 約1,771万羽、令和5年度は 10県11事例 約86万羽の鶏が殺処分されました。今シーズンは10月17日 北海道で1例目が確認、千葉県、新潟県と発生が続き、本日10月31日は島根県の養鶏場で4例目の発生報告があり、採卵鶏約40万羽が今まさに殺処分されつつあります。発生リスクは明らかに以前より増加しています。

ではなぜ、日本では10~11月頃から発生し始めるのか? それは渡り鳥が本格的に日本にやってくるのがこの時期だからです。ユーラシア大陸でウイルスに感染したカモ類などの渡り鳥が、ウイルスを日本に運んでくるんです。そして羽を休める湖沼や餌場をウイルスで汚染し、糞やネズミなどの野生生物を介して、ウイルスが鶏舎へ持ち込まれるためと考えられています。
令和4年度の大発生時にも 養鶏場での発生に先駆け、9月には神奈川県で野鳥からウイルスが検出され、その後も 宮城県、福井県、北海道、新潟県、鹿児島県など全国で野鳥からウイルスが検出されました。今年も養鶏場での発生に先駆け、9月30日に北海道で野鳥のハヤブサからウイルスが検出されています。

1羽でも陽性になると養鶏場の鶏を全羽殺すのは、感染した可能性のある鶏を迅速に処分して、養鶏場から養鶏場へ感染を広げないためです。しかしもっと大きな目的は、鳥インフルエンザウイルスが大量に増えるのを阻止して、ウイルス変異のチャンスを与えないことでしょうか。
通常は人に感染しない鳥インフルエンザウイルスですが、インフルエンザウイルスはコロナウイルスと同様よく変異するウイルスです。鳥インフルエンザウイルスが人に感染するようになることは、人類にとって非常に大きな脅威となります。ご存じのとおり、1918年から翌年にかけて全世界で2000万~4000万人の死者が出したスペイン風邪は、鳥インフルエンザウイルスが変異したものではないかと言われています。もともと人には感染しない新型のウイルスですので、人類は誰も有効な免疫を持っていません。ですので、いったん人に感染する新型ウイルスができると、大流行が引き起こされます。

すでに海外では、鳥から人への感染が報告されていますし、人から人へ感染したことが疑われる事例も報告されています。鳥から感染した人は、飼育小屋や生きた鶏がいる市場を訪れたことが分かっていますし、人から人の場合は、その患者の世話をした家族など、患者と密接に接触した人への感染でした。その後感染が拡大したという報告はありませんので、まだ必要以上に恐れる心配はないと思われます。
しかし今年、米国において、乳牛の高病原性鳥インフルエンザウイルス集団感染事例が確認されています(今のところ米国でのみ)。野鳥から乳牛1頭に感染し、主に搾乳作業を介して他の牛へ感染が広がったと考えられています。2003年以降、米国から日本への生体牛の輸入は停止されており、乳牛を介して本病が日本に持ち込まれることはありませんので、現状において日本の牛での感染を過度におそれる必要はありません。
しかしながら、高病原性鳥インフルエンザウイルスはだんだん感染範囲を広げており、本ウイルスが人への感染力を増さないように、全世界が注視しています。
(次回へ続く:飼っている鳥や野鳥と接するときの注意点)

<鳥インフルエンザとは>
 鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気です。家畜に指定されている鶏やうずらなどへの病原性やウイルスの型によって、「高病原性鳥インフルエンザ」、「低病原性鳥インフルエンザ」などに区分されています。鶏などに高病原性鳥インフルエンザが発生すると、その多くは死んでしまいます。低病原性鳥インフルエンザでは、症状が出ない場合もあれば、咳や軽い呼吸器症状が出たりすることもあります。
 国内の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザや低病原性鳥インフルエンザが発生した場合、他の農場へのウイルスまん延防止を目的として、家畜伝染病予防法に基づき、発生した農場のすべての鶏の殺処分、焼却又は埋却、消毒、移動制限など必要な防疫措置が実施されます。
 発生した農場の鶏や鶏卵などが市場に出回ることはありませんし、万が一食品中にウイルスがあったとしても、ウイルスは加熱すれば感染性がなくなるため、十分に加熱して食べれば感染の心配はありません。
 鳥インフルエンザウイルスに感染した渡り鳥は、空からウイルスを含んだ糞を落としますので、外を歩いた長靴を消毒しないで鶏舎に入ったりすれば、ウイルスが鶏に感染してしまいます。また、渡り鳥が羽を休める湖沼などの水辺はウイルスに汚染されていますので、その水を飲んだり汚染環境にいたネズミなどの野生生物が鶏舎に侵入すれば、やはり鶏はウイルスに感染してしまいます。感染したネズミなどの小動物を捕食する猛禽類なども、渡り鳥ではなくてもこのウイルスに感染します。
 なお日本では、鶏・うずら・あひるなどの家きんを飼っている方には、これらを防ぐためにも、家畜伝染病予防法で定められた飼養衛生管理基準に基づく衛生管理が義務付けられています。日本では防疫体制がしっかりしていますので、養鶏場から養鶏場へ感染がひろがることは少ないですし、養鶏場から人がウイルスに感染する可能性も非常に低いと考えられます。
 とはいえ、渡り鳥から持ち込まれる環境中のウイルス量が増えると、養鶏場での発生を防ぎきれないというのが現状です。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:鳥に与えてはいけない食べ物

鳥が食べてはいけない危険な食べ物

少しなら・・と、かわいい小鳥(コンパニオンバード)に人の食べ物をあげてしまう方がいますが、小鳥は体が小さいため、ほんの少しでも命にかかわることがあります。鳥に与えてよいとはっきり分かっている食べ物ならいいですが、鳥への安全性が証明されていない食品を与えるのはやめましょう。

チョコレート:犬猫同様、鳥にもチョコレートは有害です。チョコレートに高濃度で含まれているカフェインとテオブロミンが循環器及び中枢神経に障害をもたらします。症状は、嘔吐、下痢、元気消失、ふるえ、痙攣、ひどいときには死に至る場合もあります。放鳥時には食べこぼしもしっかり片付け、カフェイン入りの飲料なども鳥がいるところに置かないようにしましょう。

アルコール類:誤って鳥がアルコール飲料を口にしないようにしましょう。急激な血中アルコール濃度の上昇により中枢神経の抑制が起こり、抑うつ、運動失調、こん睡などが起こり、ひどいときには死亡します。

アボカド:アボガドに含まれるペルシンという物質が、鳥の肺や心臓に対して毒性をもちます。産地や品種によって毒性は異なるようですが、食べたがる鳥もいますので注意が必要です。食べた量が少しであれば、床に降りる、食欲不振、膨羽、呼吸数増加、開翼、沈うつなどの症状、たくさん食べた場合は、重度の呼吸困難を起こして死亡します。

観葉植物: 食べ物ではありませんが、ポトスなどのサトイモ科の観葉植物も食べると危険です。これらには不溶性のシュウ酸カルシウム結晶が多量に含まれており、口腔内や舌の粘膜組織に物理的損傷を引き起こしますので、食べた直後に症状が起こります。症状は吐出、口腔内の疼痛による開口、あくび、嚥下困難、舌や口腔内の紅斑や潰瘍形成、ひどいときには呼吸困難をおこす恐れもあります。

重金属: 鉛や亜鉛の重金属を過剰摂取すると重金属中毒になります。鳥は砂嚢に小石などを飲み込んで物理的に消化を助ける習性があるため、小石だけでなく金属片までもかじって飲み込んでしまいます。鳥種によっても感受性は違いますが、鳥は重金属中毒になりやすいといわれます。体も小さいことから、放鳥時にはかじらないように注意が必要です。症状は溶血によるフンの濃緑色化と尿酸の黄~緑色化、食欲減退、嘔吐、食滞、便秘、膨羽、腹痛症状、翼の下垂、脚麻痺、腎不全、精神異常、痙攣などの様々な症状が起こります。亜鉛中毒は鉛中毒より発生が少ないですが、金属の防錆加工「メッキ」に用いられており、ケージやおもちゃにも使用されている場合もありますので注意しましょう。

塩分、たんぱく質、脂肪分の多い食品:塩分が高い人の食べ物を与えられたり誤食したりすると、多飲多尿や中枢神経症状などを引き起こすことがあります。たんぱく質が過剰になると、成長阻害、行動異常、多飲多尿、腎不全や肝障害を起こすことがあります。脂質は嗜好性が高いため過食しやすく、食べ過ぎると、脂肪肝、肥満、下痢になったり、羽毛の汚れなどが見られます。塩分、たんぱく質、脂肪は、鳥にとって必要な栄養素です。成長や繁殖ステージに合った適正量を与えることが大切です

食べたものや食べた量にもよりますし、食べ過ぎると体に良くないものもあります。鳥によっても症状が出る場合と出ない場合があります。また、症状は食べてからすぐ出るとは限りません。ただ小鳥は体が小さいので、少量で大きな影響がでることがあります。誤って危険なものを口にしてしまった場合や、元気消失、痙攣、フンの色がおかしい、ふらつくなどの症状が見られたときには、すぐに鳥に詳しい獣医師に相談しましょう。

やはり放鳥中の事故が多いです。放鳥前には、その都度、放鳥スペースの食べ物を片付け、危険なものがないか確認しましょう。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:猫に与えてはいけない食べ物

猫が食べてはいけない危険な食べ物

今回は猫です。猫は肉食動物です。猫にあげてはいけない食べ物を知っておきましょう。

ネギ類:犬と同じように猫にも、玉ネギ、長ネギ、アサツキ、ニラ、ニンニク、ラッキョウなどのネギ類を食べさせてはいけません。これらには猫の赤血球を壊す物質が含まれていて、大量に摂取した場合には、貧血を引き起こすことがあります。食べた量や個体差にもよりますが、食欲低下元気消失、尿が橙~暗赤色などの症状が表れたりします。

チョコレート:犬と同様、チョコレートは猫にも中毒を引き起こします。チョコレートにはカフェインとテオブロミンが高濃度で含まれており、量やチョコの種類にもよりますが、嘔吐、下痢、元気消失、ふるえ、痙攣、ひどいときにはショック状態になったり死に至る場合もあります。もちろんカフェイン入りの飲料なども猫がいるところに置かないようにしましょう。

ぶどうと干しぶどう(レーズン):少量でも猫にとって病気の原因になることがあります。嘔吐、元気消失、下痢や排尿の減少など、ひどいときには腎不全を引き起こす場合もあります。ブドウやレーズンは調理台や猫の届く場所に置かないようにしましょう。

アルコール:アルコールのエタノールや、ビールに含まれているホップも、猫にアルコール中毒を引き起こす可能性があります。アルコール中毒の症状は、嘔吐、情動不安、ふるえ、痙攣、こん睡状態などです。

香辛料:唐辛子、胡椒、マスタードなどは、胃腸を刺激して下痢をおこしたりします。

牛乳:猫は牛乳に含まれる乳糖を消化するのが得意ではなく下痢をすることがあります。大丈夫な猫もいますが、猫にあげる場合は猫用ミルクをあげましょう。

生肉、生卵、生の魚介:猫も生卵や生肉によりサルモネラ中毒や大腸菌中毒を起こし、嘔吐や下痢などをおこすことがあります。生卵は皮膚や被毛にトラブルを起こすことがあります。生の魚介類も消化が悪く、下痢や食物アレルギー等の消化器系の不調が起きたり、場合によってはビタミン欠乏症をおこす場合もあります。

塩分や糖分、脂肪分の多い食品:塩分の多い食品はもちろんダメです。猫が好きそうな魚の練り物やハムソーセージなどの加工品は塩分が多すぎます。塩分を摂り過ぎると心臓や腎臓に負担がかかります。また糖分や脂肪分の多い食事は、カロリーオーバーから肥満の原因になります。

消化管を傷つける可能性があるもの:肉や魚の骨などはのどに詰まったり、消化管を傷つけたり、歯を傷めたりする恐れがありとても危険です。骨を食べさせるのも避けるべきです。

ドッグフード:猫と犬は必要とする栄養素のバランスが違います。ドッグフードには猫に必要な栄養素が必要量含まれていません。猫はビタミンAやたんぱく質の量が犬より必要です。また犬はタウリンやアラキドン酸を体内合成できますが、猫はこれらを食べ物から摂取する必要があります。食べると危険というわけでありませんが、猫には猫のキャットフードをあげましょう。

その他、室内で育てている植物にも、シクラメンやポインセチアなど猫が食べると危険なものがありますので、間違って食べないように猫のいる部屋には置かないようにしましょう。

食べた量にもよりますし、猫によっても症状が出る場合と出ない場合があります。また、症状は食べてからすぐ出るとは限りません。猫がこれらを食べてしまった場合は(食べたと思われるときも含む)様子をよく観察し、いつもとは違う様子が見られたときには、すぐに獣医師に相談しましょう。

猫に食べさせたくない食べ物は、猫が届かない場所に保管しましょう。調理や食事の最中は、調理台やテーブルの上に乗らないようにさせましょう。また、ゴミ箱から食べたりできないように、食べ残しもあげないようにしましょう。

人の食べ物は、塩分や糖分、そして脂肪分などが多いものが多く、猫には害になります。基本的には、人間の食べ物は猫に与えないことが一番安全です。猫を危険にさらさないためには、主食には猫の年齢に合った「総合栄養食」のキャットフードをあげるのが最良です。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:犬に与えてはいけない食べ物

犬が食べてはいけない危険な食べ物

犬のお散歩のときに注意したい秋の有害な植物についてはすでに書きましたが、食欲の秋ですので、食べ物のことをもう少し。人間にはご馳走でも ペットにとっては害になるものもありますので、ペットにあげてはいけない食べ物を知っておきましょう。

まずは、犬が食べてはいけない食べ物です。犬が食べると中毒をおこしたり、消化が悪くて下痢を引き起こしたりします。

ネギ類:タマネギ中毒は有名ですが、長ネギ、アサツキ、ニラ、ニンニク、ラッキョウなど、ネギ類はどれも有毒です。これらには赤血球を壊す物質が含まれていて、犬に深刻な貧血を引き起こす可能性があります。症状としては 元気消失、筋力低下、尿が橙~暗赤色になったりします。

チョコレート:チョコレートにはカフェインとテオブロミンが高濃度で含まれており、どちらも犬に中毒を引き起こします。量やチョコの種類にもよりますが、症状としては、嘔吐、下痢、元気消失、ふるえ、痙攣、ひどいときにはショック状態になったり 死に至る場合もあります。もちろんカフェイン入りの飲料(コーヒーやお茶)なども犬が届くところに置かないようにしましょう。

ぶどうと干しぶどう(レーズン):食べても問題ないこともありますが、嘔吐、元気消失、下痢や腎不全を引き起こす場合もあります。

アルコール類:アルコールのエタノールや、ビールに含まれているホップは、犬にアルコール中毒を引き起こす可能性があります。アルコール中毒の症状は、嘔吐、情動不安、ふるえ、痙攣などで、ひどいときには死に至ることもあります。

香辛料:トウガラシ、コショウ、マスタードなどは、嗅覚の強い犬には刺激が強すぎます。胃腸を刺激して下痢をしたりもします。

塩分の多い食品:みそ汁・ラーメン、ハム・ベーコン、カレー、ポテトチップスなどは、犬にとって塩分が強すぎます。塩分を摂り過ぎると心臓に負担がかかるなど、様々な弊害がでてきます。

消化管を傷つける可能性があるもの:鶏の肉や魚の骨などの硬い骨は、噛み砕いたときに裂けてのどや消化管に刺さる可能性があり危険です。

その他:マカダミアナッツ、アボカドもあげてはいけません。冷たい牛乳や生の魚介など、消化の悪いものもあげるのをやめましょう。生卵や乳製品も、下痢や食物アレルギー等の消化器系の不調を招くことがあります。

食べた量にもよりますし、犬によっても症状が出る場合と出ない場合があります。また、症状は食べてからすぐ出るとは限りません。犬がこれらを食べてしまった場合は(食べたと思われるときも含む)様子をよく観察し、いつもとは違う様子が見られたときには、すぐに獣医師に相談しましょう。
基本的には、人間の食べ物を犬に与えないことが一番安全です。食べているのをジッと見つめられるのを無視するのは難しいかもしれませんが、ペットを危険にさらさないためには、栄養バランスも含めてきちんと考えられたドッグフードを与えるのが最良です。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:秋のダニにも注意!

秋の草むらにもダニがたくさん潜んでいます

ペットのダニ被害は春から夏の季節に多いと思っている方もいらっしゃると思います。でも実は、秋のダニにも注意が必要です。
ダニは気温が20℃以上あれば繁殖できますので、春になれば成ダニが活動を始め、夏にかけて産卵します。そうして秋は、成長した若ダニや幼ダニが増えている状態となっており、冬眠に備えようと活発に活動しています。つまり秋の草むらには、ダニがたくさん潜んでいて、犬や猫がくるのを待っています。

野外で動物を吸血するダニは、主に家の外にいるマダニで、家の中にいるダニとは異なるダニです。マダニは8本脚からなる節足動物で、肉眼でも確認できる大型のダニです。固い外皮に覆われており、吸血前の成ダニの大きさは種類により3~10mmくらい。日本ではフタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどが動物に寄生して吸血します。これに対し、家の中にいるヒョウヒダニやイエダニなどは約1mm以下と非常に小さく、マダニとは違う種類のダニです。

マダニは草むらなどに入ってきた犬や猫などの体について吸血します。吸血中のマダニはペットの血液を吸ってパンパンに大きくなります。是非そうなる前に、お散歩など、外から帰ってきたら、ペットの体にダニがついていないか十分チェックしてあげましょう。特に、まぶたや耳の先などの顔回り、お腹、しっぽ、足の指の間などの皮膚の柔らかい部分がダニに狙われやすい場所です。ついたばかりのダニはまだ小さく、ゴミやホコリのように見えます。ペットの体にいつもとは違う何かがついているようなら、よく見て確認しましょう。でももしマダニがついていたとしても、無理にむしり取ってはいけません。無理に取ると、マダニの口器がペットの皮膚に残ってしまい化膿したりしますので、取り残しのないように注意深くしっかり除去しましょう。もし自分で除去できない場合には、動物病院に行って除去してもらいましょう。

なお、人もマダニに咬まれる場合があります。咬まれると、皮膚が発赤して腫れることもありますが、かゆみを伴わないことも多く、吸血されていることに気づかない場合も多いようです。吸血して皮膚にまだついているマダニを見つけた場合は、ペット同様、無理にとるとダニの口器が皮膚に残る可能性があるため、皮膚科等の医療機関を受診することをおすすめします。近年ではダニが媒介する人の感染症も増えてきています。医療機関にはその地域の感染症情報が集まっていますので、いつどこで咬まれたのかなどの状況も医師に伝えましょう。

ちなみに、マダニが媒介する動物由来感染症のひとつに、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という病気があります。SFTSウイルスをもつマダニに人が咬まれかまれると、このウイルスに感染して高熱がでたり、死亡することもあります。2011年に中国で初めて特定され、日本では2013年に山口県で確認されました。西日本を中心に900人以上の感染者が出ており、国内の死者数はわかっているだけで100人に上るとのことです。実はこのSFTS、令和3年以降 静岡県内でも毎年確認されています。SFTSウイルスをもつマダニは、シカやイノシシなどの野生動物に寄生しており、これらの移動に伴って、感染地域を広げているとみられています。シカやイノシシなどの野生動物はSFTSウイルスに感染しても大丈夫だそうですが、人や犬・猫が感染すると高い致死率を示すとのことですので、軽く考えずに十分注意しましょう。

ペットが病気にかからないようにするために、日ごろからペットのダニ駆除の予防薬を使い、ペットの体のチェックを怠らずに行いましょう。もちろん人も山や草むらに入るときには、ダニに咬まれないように対策しましょう。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:秋のお散歩の注意点

犬に有害な秋の植物を知っておきましょう

秋は外で過ごすのにちょうどいい、気持ちのいい季節です。ワンちゃんとのお散歩や外で遊ぶ時間が自然に増えると思いますが、外には犬にとって有害な植物もあるので注意しましょう。

〇銀杏:イチョウの木の実である銀杏は、犬にとって有毒です。イチョウの木が多い場所は銀杏の落下も多く、犬が興味をもって食べてしまうこともあります。中毒症状が出てしまう摂取量は個体によって差がありますが、嘔吐やけいれん、呼吸困難などの症状がおき、ひどいときには意識不明になってしまうこともあります。大量に銀杏が落ちていそうな場所には行かないように注意しましょう。

〇毒キノコ:秋の味覚、野生のキノコ。緑の多い公園には意外なところにキノコが生えていたりします。毒キノコを食べれば人でも命にかかわりますが、犬が食べても同じです。キノコは見分けが難しいので、基本的に野生のキノコは食べさせないようにしましょう。

〇キク、カーネーション、ヒガンバナ、ベコニア、シクラメンなど:秋に咲く花には、犬にとって有害なものがたくさんあります。身近なキク、カーネーションなども、犬にとっては有害です。そのほかにもイチジクの葉や枝もダメです。食べれば中毒症状を起こしますし、触れるだけで皮膚炎を起こしてしまう子もいます。これらの植物には十分注意し、触ったり食べてしまわないように気を付けましょう。

犬に玉ねぎやチョコレートをあげてはいけないことは有名ですが、これまた秋の味覚、ブドウ(干しブドウも)も犬にあげてはいけません。犬にとって危険な食べ物を知っておくことは、愛犬を守ることにつながります。
犬に危険な秋の植物を知った上で、ワンちゃんと一緒にたくさんお出かけして、秋の景色を楽しみましょう。そして気温の変化に気を配り、しっかりと体調管理をしてあげましょう。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:秋のはじめの注意点

秋はペットの体調を整える季節です

まだまだ暑い日が続きますが、秋は確実に近づいてきています。
秋は、夏から冬へ移行する途中の季節の変わり目。夏の暑さによる疲れや、1日の中の寒暖差などにより、ペットが体調不良を起こしやすい季節です。一方で 過ごしやすい季節でもありますので、是非この時期にペットの体調を整えてあげましょう。

〇食欲不振:秋のはじめは、夏バテを引きずってしまうこともあり、食欲不振になりがちです。内蔵に疲れが残っているペットは、消化不良を起こすこともあります。夏場に体重が落ちてしまった場合は、フードを高タンパクなものに変えたり、ササミやお肉などの好きなものを少しトッピングして、冬がくるまでに体重を戻してあげましょう。

〇食べ過ぎ:夏バテの影響がないペットの場合は、冬に備えるために代謝が上がり、食べる量が増えます。人間で言うところの食欲の秋です。肥満には十分注意しましょう。量の加減はもちろん、低脂肪・高タンパクなフードをあげてみるなど、食事内容も工夫してみましょう。

〇運動不足の解消:暑い夏は運動量が減るため、運動不足になりがちでした。秋は気温が下がって動きやすい季節です。少しずつ運動量を増やして運動不足を解消してあげましょう。筋肉量が増えれば、基礎代謝量も増えますので肥満予防にもなります。

〇毛の生え替わり:秋は毛の生え変わりの季節です。春は冬毛が抜け落ちて密度の少ない夏毛に、秋は夏毛が抜けてフワフワした保温性の高い冬毛に生え替わります。抜け毛やフケが多くなりますので、こまめにブラッシングをしてあげましょう。ブラッシングすると血行が良くなり新陳代謝も促すことができます。

〇気温変化による体調不良:朝と昼との寒暖差が激しい秋は、ペットも体調を崩しがちです。いきなり寒くなることもありますので、早めに寝床を暖かくしておくなど、あらかじめ準備しておいてあげると安心です。特に高齢ペットは気温差に弱いため、寒くないように気を配ってあげましょう。

〇秋に発症しやすい病気もありますので注意しましょう。
●椎間板ヘルニア、十字靭帯断裂: 秋の朝や夜には急激に気温が下がることがあります。犬の場合、お散歩のとき、寒くて体がこわばり、椎間板ヘルニアや十字靭帯断裂を発症してしまうこともあります。寒いときには出かける前に軽く体を動かし、体を温めてから出かけるようにしましょう。
●膀胱炎: 膀胱炎は秋になると増えます。もう暑くないために、水を飲む量が減ることが要因のひとつ。寒くてあまり動きたがらず、オシッコを我慢してしまうことも原因となります。普段からオシッコの色や回数をチェックしておきましょう。
●呼吸器や消化器の病気: 秋は1日の中の寒暖差が大きく、気温も低くなることから、呼吸器系の病気や下痢などの消化器系の病気を発症しやすい季節です。咳や下痢には注意しましょう。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:犬の問題行動としつけ

犬に問題行動を起こさせないために

犬の問題行動とは、人間の社会に受け入れられないような犬の行動です。犬は長い年月をかけて目的をもって改良されてきましたので、様々な性格や形態の犬がつくられています。攻撃性をもつようにつくられた犬もいますし、飼い方によっては人間の優位に立ち、吠える、噛むといった犬本来の性質が強く現れてしまう犬もいます。これらの犬には、よほどしっかりしつけをしない限り、本来の性質を矯正することは難しいといえます。見た目が「かわいい」「気に入った」というだけで犬を選ぶのは誤りで、その犬種の性質をしっかり理解した上で、飼い主さん自身の性質と、生活環境を考えて、犬種を選ぶことが重要です。

また、犬や猫は幼齢期に早期に親・兄弟から引き離すと十分な社会化が行われず、成長後に噛みぐせや吠えぐせなどの問題行動を引き起こす可能性が高くなるといわれています。しかし以前の日本では、生まれた子犬を母犬から早くに引き離して販売するということが行われていました。犬猫の問題行動は飼い主の飼育放棄につながり、飼育放棄の増加は殺処分数の増加にもつながります。そのため、令和3年度動物愛護法の改正により、生後57日齢未満の犬猫の販売が禁止されました。
本来、子犬は母犬や兄弟犬と生後2~3ヵ月までは一緒に過ごすのが理想です。親・兄弟との接触、飼い主の家族の他、多くの人や犬に会わせたり、いろいろな場所に行ったり、他の動物に会わせたり、音に慣れさせるなど、子犬のうちに多くのことを体験させることが重要だからです。いろいろな体験を通して、子犬は社交的な犬になっていきます。

犬のしつけとは、人と一緒に暮らすために犬に守らせたいルールを覚えさせることです。室内の小型犬のしつけの目標は、飼い主を噛まないことと、吠えて近所に迷惑をかけないことです。大型犬では、散歩の途中で他人や他の犬に吠えたり攻撃したりしないようにすることも必要です。

人が犬のリーダーになる主従関係は、犬にとってかわいそうなことではありません。飼い主が犬の頼れるリーダーになれば、犬は安心して暮らすことができます。

「ハウス」「オスワリ」「フセ」「マテ」「オイデ」などの指示語のトレーニングは、飼い主が犬をコントロールするために重要です。訓練を通じてリーダーである飼い主との信頼関係も深まります。

重要なのは、ダメなことはダメとあきらめさせること。吠えればなんでもきいてもらえると思わせないために、吠えても無視することです。目もみず、声もかけず、犬があきらめるまで待ちましょう。

叱るのではなく、できたときに誉めましょう。最初は「おやつのごほうび」と「なでてほめる」をセットでしてあげましょう。ほめられるのがうれしくなると、なでられたりほめられたりすること自体がごほうびとなります。

しつけの仕方にもいろいろありますが、自分の犬と生活環境に合わせて、ムリをせず、あきらめず、時間をかけて続けましょう。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:ペットの肥満2

太ってしまう病気もあります

ペットが太る原因は食べすぎの他にもあります。以下、太る原因をまとめてみました。

〇飼い主の餌のあげ方:「かわいいいから」「おいしそうに食べるから」と、おやつや人間の食べ物を与えていると太ります。栄養バランスのいい総合フードも、与えすぎると太ってしまいます。フードの盗み食いや仲間のフードの横取りなども、飼い主の配慮で防げます。

〇高カロリーな食事内容:脂質や糖質が多い食事内容だと高カロリーになり、適度に運動させていても太っていきます。脂肪の多い肉や、糖質の多いパンやサツマイモのあげすぎには注意が必要です。

〇犬の運動不足:犬の場合、全く散歩に行かなかったり、散歩時間が短すぎたりすると、運動不足で太ります。体格にあった十分な運動が必要で、食べた分のカロリーを消費できなければ太るのは自然です。

〇去勢・避妊手術:去勢や避妊手術をすると、生殖活動がなくなって基礎代謝が下がったり、ホルモンバランスが崩れたりしますので、手術後は食事量を変えないと太りやすくなります。同情しておやつを与え過ぎてしまう飼い主さんもいますが、代謝量に見合った量のフードを与え、適度に運動させることが必要です。

〇病気:餌の量もきちんと管理されており、適度な運動をしているのに太ってしまう場合は、病気かもしれません。元気がない / 食事量は変わらないのに急に太ってきた / 食欲がないのに体重が増えた、太ったように見える / 毛が抜けて薄くなってきた、毛の艶がよくない / 水をたくさん飲み尿の量も多い(多飲多尿)/などの症状が複数みられる場合には、クッシング症候群や甲状腺機能低下症、糖尿病などの病気が疑われます。少しでも気になったり、おかしいと感じたら、すぐ獣医さんに診てもらいましょう。
●クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症):副腎から出るホルモン物質が過剰に分泌される病気で、水をたくさん飲んだり排尿の回数や量が増えたり、毛が抜ける、食欲が旺盛になる、顔がむくんでお腹が大きくなったりします。
●甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの分泌が減って、急に太って動きが鈍くなったり、毛が抜けて皮膚が見えるようになります。高齢ペットに多く、食欲も落ちずに体重が増加したりします。
●糖尿病:食欲が増進し、たくさん水を飲むようになります。

食べすぎによる肥満であれば、食べ物の量を減らさなければなりません。その場合、いきなりたくさん減らすのではなく、減らすのは1割程度にして、その分を低カロリーのフードや野菜などに置き換えたりすると無理がありません。食事の回数を増やして、全体量は減らすというのもいいかもしれません。もちろんのことですが、適度な運動も大切です。普段からペットの体重を測って適正体重やBCSを把握しておくと、いい目安になります。

一旦太ったペットを減量させることはとても難しいものです。そうなる前に、飼い主が強い意志をもって、ペットに適正体重を維持させましょう。かわいいペットに長生きて欲しいなら、それはどうしても必要なことです。

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>

ペット衛生管理の豆知識:ペットの肥満1

食事を管理してペットを太らせないようにしましょう!

犬や猫に標準量のペットフードを与えると、とても短時間で食べてしまう子が多いですよね。
特に犬は10秒ほどの短時間で丸呑みしているかのうように食べてしまいます。飼い主によっては、10秒終わってしまうのではかわいそうに思い、追加でフードをあげてしまっている方もいるのではないでしょうか。犬は与えれば与えただけフードを食べてしまいますので、フードの追加はやめましょう。動物が太る原因は、私たちが太るのと同じ、食べすぎです。

動物が早食いなのは、野生だったころからの習性。自然界で生きる野生動物は、お腹が減っているのが普通の状態で、獲物が捕れたとき食べられるだけ食べる習性があります。またいつ外敵から襲われるかわかりませんから、やはり短時間でお腹に詰め込もうとします。ですから早食いはあたり前。丸呑みでも強い消化液でちゃんと消化できますので、消化が悪くなることを心配する必要はありません。

肥満は一番身近な生活習慣病です。人間の肥満は自分でコントロールできますが、ペットは人がコントロールしてあげなければなりません。ペットがかわいいなら、太りすぎる前に食事やおやつの量をうまくコントロールしてあげましょう。
ペットが喜ぶからといってフードの追加はやめましょう。そして食べ残しのフードは早めに片付けましょう。フードを追加したりいつまでも置いておくと、肥満はもちろん、好き嫌いも増やしてしまいます。
カロリーオーバーにならないように、年齢によってフードを変えることも必要です。フードに記載してある給餌量はあくまでも目安ですので、運動量が少なめの環境下で飼っている場合には量が多すぎる場合があります。 成長期であれば体重をこまめに測定して、月齢に見合った成長をしているか確認しましょう。
おやつを与える場合も与え過ぎに注意します。 欲しがるからといって人の食べ物を分け与えることも止めましょう。 味の濃い人の食べ物に慣れてしまうと、ペットフードを食べなくなります。犬の場合は、骨やガムなどを与えて気を紛らわしましょう。

太って体重が増えても、体を支える骨は太くなりませんし、運動が億劫になると筋肉も衰えて、背骨や足の関節に大きな負荷がかかり、痛みを伴う変形性関節症になりやすくなります。
また、太った体に血液を送り出す心臓も肥大し、首回りに脂肪がつけば呼吸を妨げますので、少し動いただけでも息が苦しくなります。こうなると散歩や運動は辛いだけで、残る楽しみは食べることだけになってしまいます。 まさに太ることによる悪循環。そうなる前にコントロールしましょう。

<参考>犬猫の標準体型の指標 BCS
犬・猫の標準体型を判断するために、BCS(ボディ・コンディション・スコア, Body Condition Score)という指標があります。スコアは5段階評価で、BCS3を理想的な標準体型とし、スコアが少なくなるほど痩せ気味、スコアが高くなるほど太り気味であることを表します。
一度太ると、ペットのダイエットは大変です。BCS 4の肥満気味のうちに、食事やおやつの量を見直しましょう。

出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」  ⇒ 環境省リーフレット 14ページ

⇒ ホーム
⇒ ペット衛生管理の豆知識<目次>