ペット衛生管理の豆知識:春のアレルギー

犬猫の花粉症とその対策

春に花粉症になるのは人間だけではありません。動物も花粉症になります。ペットの花粉症は人間とは症状が違うため、飼い主が気づかないことが多いようです。花粉症だと気づくのは、くしゃみをしたり、鼻水がでたり、人と同じ症状を出したときです。花粉症を心配しすぎる必要はありませんが、飼い主としてペットの症状や対策方法を知っておきましょう。

花粉が原因となる症状は、かゆみ、発疹、脱毛などの皮膚炎、くしゃみや鼻水といった鼻炎症状や結膜炎です。犬では皮膚炎(かゆみ、発疹、脱毛)を発症することが多く、猫の場合は、人と似た症状(くしゃみ、鼻水)が出ることが多いようです。ペットたちをよく観察して、花粉症を疑うようであれば、動物病院で検査してもらいましょう。原因が分かれば、治療と対策ができます。

花粉の時期はスギで2~4月、ヒノキは3~5月、イネ科の植物は5~10月、ブタクサは秋で8~11月です。犬猫ともにスギ花粉によるものが最も多く、次いでヒノキ、イネ科植物となります。該当する時期に、かゆみや発疹が出たり、くしゃみや鼻水が出たりする場合は、花粉症かもしれません。外に出る機会が少ない室内猫などでも、飼い主さんが持ち帰ってくる花粉などから症状が出ることがあります。

花粉症対策の考え方は人間と同じです。空気清浄器や掃除機をこまめに使って、室内の花粉の量を減らしましょう。外から帰ったときには、ブラッシングや水で濡らしたタオルなどで体を拭いて花粉を落としてあげましょう。外から来た人間が花粉を持ち込まないよう、人も同じように対策しましょう。この他、犬には、飛散が多い日の散歩は控えたり、散歩に出るときには花粉がつきにくい素材の洋服を着せるなどで対策しましょう。猫の場合は、やはり外に出さないことが一番です。
まだ花粉症の症状がない場合でも、対策をしておけば、これから花粉症になるのを防ぐこともできます。

花粉症であることがわかったときの治療は、症状を抑えるための対症療法が中心です。皮膚のかゆみなどを抑える場合は、免疫の過剰反応を抑えるステロイド剤や抗ヒスタミン剤が処方されます。飲み薬や症状により塗り薬も使われます。また、掻かないように、エリザベスカラーや洋服を着用させたりする場合もあります。

アレルギー対策で最も重要なことは、人間の花粉症対策と同じで、アレルゲンを避けることです。花粉の時期は、なるべく花粉と接することがないようにしてあげましょう。

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ペット衛生管理の豆知識:猫と犬の発情期

発情期の注意点と避妊・去勢手術

<猫の発情期>
メス猫の初めての発情(性成熟)は生後6~10ヵ月位、その後は年に2~3回の発情期があります。発情期のピークは、日照時間が長くなる春先です。発情期の猫は、普段とは違う大きな声でずっと鳴き続けます。叱っても、閉じ込めても、鳴くのを止めさせることはできません。水をかけたり、マタタビを与えて気をそらしても、一時的に鳴き止むだけです。体をなでたりすると、逆にそれが刺激となって、さらに発情することもあります。発情が始まってしまったら見守るしかありません。ちなみに猫には生理はありません。

オス猫は生後8ヵ月頃に性成熟を迎えます。オス猫の発情は、発情中のメスに接触することで起こります。室内飼育の場合も、外からメス猫の鳴き声が聞こえたり気配を感じることで、刺激され発情することがあります。落ち着きがなく攻撃的になったり、あちこちにくさいオシッコを飛ばすスプレー行動をとるようになります。オス猫の発情は、メス猫のように鳴かないので気づきにくいですが、発情したメス猫を近づけないように気を付けましょう。

また発情期には、交尾相手を求めて、室内飼育の猫も脱走しやすくなります。脱走することで、交通事故にあったり、よその猫とケンカしたり、接触や交尾によって感染症をもらってきてしまうこともあります。もちろんメス猫は高い確率で妊娠します。発情期にはいつも以上に脱走には注意しましょう。

さらに発情中は、いつもより性格が荒くなりますので、飼い主さんが咬まれて怪我をするようなこともありますので、気を付けましょう。

<犬の発情期>
メス犬は、小型犬で生後7~10ヵ月位、大型犬で生後8~12ヵ月位に最初の発情(性成熟)を迎えます。メス犬の発情期は、生理(陰部からの出血)で知ることができます。その後の発情期は5~10ヵ月位のサイクルで繰り返し、小型犬は年に2~3回、大型犬は年に1~2回の発情期があります。季節では半年ごと、春は3~5月、秋は9~11月に発情期が多いといわれています。サイクルもありますし、必ずしも春だけが発情の季節ではありませんが、発情期中は本能的に子孫を残そうと交尾相手を求めますので、散歩など外出時には気を付けましょう。

オス犬は生後8~10ヵ月位に性成熟を迎えます。春も秋も関係なく、1年中いつでも機会があれば交尾が可能です。メス犬のフェロモンを感知して発情すると、オス犬はマーキングやマウンティングをすることが増えます。発情中にメスから出るフェロモンはオス犬を呼び寄せますし、他のオス犬への攻撃性も高まっていますので、ドッグランなど、犬が集まる場所へ行くときには、オス同士のケンカに注意しましょう。

<避妊・去勢手術のすすめ>
発情は動物が本来持っている生理現象です。しかし、発情期は思わぬトラブルが起きやすい時期でもあります。繁殖を考えていない場合は、猫も犬も生後6ヵ月以降で最初の発情前までに、メスであれば避妊手術(卵巣・子宮全摘出)を、オスでは去勢手術(睾丸摘出)をしましょう。避妊・去勢手術をすれば、望まない妊娠を避けることができます。避妊・去勢手術を行っていれば、その後は発情せず、穏やかに過ごせるようになります。また、メスであれば子宮卵巣や乳腺の病気、オスであれば前立腺や睾丸などの病気も予防できます。

人もペットもストレスを感じず健康に過ごすために、早めの手術をおすすめします。
ただ、手術をすると、ホルモンバランスなどの関係でオス・メスともに太りやすくなりますので、ご飯の内容には気を配り、適度な運動をさせましょう。

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ペット衛生管理の豆知識:猫用ワクチン2

猫用ワクチン接種に関わる注意点

「うちの猫は完全室内飼いで外に出さないからワクチンなんて打たなくても大丈夫」と思っている飼い主さんもいるかもしれません。室内で飼っている猫は、もちろん外にいる猫より感染リスクは低くなりますが、絶対安全とは言い切れません。飼い主さんや家族が、外から室内にウイルスを運んでしまう可能性があるからです。コアワクチンのウイルスは感染力が強く、空気感染しますし、外で野良猫に触った手で家の猫を触ったりすれば、ウイルスは室内に持ち込まれます。そのため、室内飼育の場合でも、猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症の「3種混合」の接種が推奨されています。

外に出る猫には、3種混合ワクチンに猫白血病ウイルス感染症を加えた「4種混合」、さらに猫クラミジア感染症を加えた「5種混合」など、母猫や兄弟猫の感染状況、他猫との接触の有無、住んでいる地域や飼育環境を考慮して、どれを予防するかを動物病院で相談しましょう。

多頭飼育の場合、猫白血病ウイルス陽性の猫がいるのであれば、同じ家で飼っているすべて猫に猫白血病ワクチンを接種する必要があります。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)のワクチンについては、混合ではなく単独で接種する形になります。猫エイズは、外に出て感染猫との交尾や、ケンカで咬まれたりすることがなければ感染しませんし、接種後の副作用の報告もあり、扱っていない動物病院もあります。陽性猫との接触を避けて、感染を予防することが現実的かもしれません。

猫白血病ウイルス感染症や猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)については、検査キットもありますので、ワクチン接種前に動物病院で感染の有無を検査してもらった上で、それぞれの猫に接種するワクチンを決めることもできます。

なお、外で生まれた子猫を拾ったとき、鼻水や結膜炎で顔がぐちゃぐちゃになっていることがあると思います。このような子猫は、すでに猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルスに感染していることが多く、治ったように見えても、その後もウイルスのキャリア猫となります。ワクチンで発症を抑えることはできますが、加齢やストレスで免疫力が低下したとき、再度ウイルスが活性化してくることもありますので、シニア猫や、環境が変わるなどのストレスのかかる猫にこそ、是非ワクチン接種を定期的に続けましょう。

ペットショップやブリーダーから迎えた猫なのか、保護猫なのか、室内飼いか、外に出る猫か、1頭飼いか、多頭飼育か、などの情報を獣医師に伝え、ワクチネーションプログラムを組んでもらい、計画的に接種しましょう。

なかには、ワクチン接種後の副反応を心配している飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。でも副作用の起こる確率は、病気になって死んでしまう確率よりずっと低いんです。確かに、ワクチンを打つと、猫によっては体調が悪くなることもありますし、ごくまれには顔面が異常に腫れたりするなどの症状が出たり、アナフィラキシーショックを起こす場合がありますので、ワクチン接種後はしばらく様子を見守ってください。万が一を考えて、午前中にワクチン接種を受けておけば、何らかの副反応が出た場合、すぐ動物病院に相談できるので、安心です。また、ワクチン接種後は、激しい運動、シャンプーは避け、2~3日間は安静にしてください。

また、ほとんどのペット保険では、ワクチン接種にかかる費用は補償の対象外となっています。ワクチン接種は病気の治療ではなく、健康な状態で行う予防行為と解釈されているためです。一方で、多くのペット保険では、ワクチンを接種せずに、ワクチンで予防できる病気にかかった場合、その治療にかかる費用も補償の対象外となってしまいます(ワクチン接種をしたにも関わらず治療が必要になった場合は補償の対象となります。)感染して治療が必要になれば、その費用はワクチン接種の何倍もかかります。接種の費用や手間は、飼い主さんの負担となりますが、ワクチン代を惜しんで、最終的に高額な治療費が必要になってしまうようなことのないように、予防できる病気はしっかりと予防しておきましょう。

なお、ペットホテルなど、猫が集まる施設を利用する際などには、ワクチンの接種証明書が必要です。接種1年以内の証明書の提示を求められる場合が多いと思いますので、事前に利用施設へ確認しましょう。証明書はワクチン接種を受けた動物病院で発行してくれます。

ワクチンを接種しても感染症にかかることはありますが、ワクチン接種が感染症の発症予防、症状の軽減に大きな効果を発揮することは確かです。すべての病気がワクチンで予防できるわけではありませんが、ワクチンで予防できるものは、ワクチンを接種してしっかりと予防しましょう。

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ペット衛生管理の豆知識:猫用ワクチン1

ワクチンで予防できる猫の感染症

猫用ワクチンも犬用と同様、すべての猫に接種すべき「コアワクチン」と、感染のリスクに応じて接種する「ノンコアワクチン」があります。
コアワクチンは、致死率が高く伝染性が高い病気を予防します。猫でコアワクチンの対象となる病気は、「猫ウイルス性鼻気管炎」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症(猫のパルボウイルス感染症)」の3つです。
ノンコアワクチンには、「猫クラミジア感染症」「猫白血病ウイルス感染症」などがあり、住んでいる地域や飼育環境など、感染のリスクに応じて接種します。

ワクチン接種によって予防できる猫の感染症は、以下の6種類です。

(1)猫ウイルス性鼻気管炎:猫ヘルペスウイルスによる感染症で、発熱、激しいくしゃみや咳、多量の鼻水や目やにを出すなど、風邪のような症状を起こします。混合感染すると重篤化して死亡することもあります。回復してもウイルスは体内に潜んでいます。

(2)猫カリシウイルス感染症:猫ウイルス性鼻気管炎と似た風邪のような症状を起こしますが、進行すると口腔や舌に水泡や潰瘍をつくります。猫ウイルス性鼻気管炎よりも軽い症状ですが、混合感染すると重篤化します。様々な種類のウイルス株があり、回復後もウイルスのキャリアになります。

(3)猫汎白血球減少症(猫のパルボウイルス感染症):猫パルボウイルスによる感染力がとても強い伝染病です。高熱、激しい嘔吐や下痢などを起こします。血液中の白血球数が著しく少なくなり、脱水状態が続いて猫は衰弱します。特に子猫は重症化しやすく、非常に死亡率の高い伝染病です。

(4)猫クラミジア感染症:クラミジアという細菌によって引き起こされる感染症で、主に子猫が感染します。結膜炎、涙目、目やに、くしゃみなどの症状がみられ、猫同士の接触で感染します。持続感染することもあり、人獣共通感染症のひとつです。

(5)猫白血病ウイルス感染症:猫白血病ウイルスによる伝染病で、免疫機能の抑制、貧血、リンパ腫など、様々な症状を示します。感染猫の血液や唾液、尿や糞便中にウイルスがいるため、感染猫との接触で感染します。感染しても発症する猫は少ないですが、発症すると治療は困難でほぼ死亡します。

(6)猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ):人のHIVに似ていますが、猫同士でしか感染しません。感染力が弱いので空気感染することはありません。ウィルスは血液や唾液に含まれており、感染猫とのケンカで咬まれたりしてうつります。感染しても発症しない猫もいますが、発症すると免疫不全を起こし、下痢、口内炎、発熱などの症状が出て、進行するとほぼ死亡します。

ワクチンによる免疫は一生続くわけではありません。ワクチンの種類によっても異なりますが、複数回の接種が必要です。一般的には、生後2ヶ月の段階で第1回目を、その1ヶ月後に第2回目を行い、成猫になってからは年に1回の追加接種が推奨されています。ワクチンによっては子猫期に3回接種することもありますし、追加接種は3年に1回でよいとしているものもあります。

ワクチンは、感染症予防において最も重要かつ効率的な手段です。特にウイルス感染症には抗生物質が効きませんので、感染してしまったら症状に対する治療(対症療法)しかできません。ワクチンで予防できるものは定期的に予防接種を受けて、感染症に対する免疫をつけておきましょう。

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ペット衛生管理の豆知識:犬用ワクチン2

ワクチンで予防できる犬の感染症

狂犬病以外の感染症予防接種は、「混合ワクチン」が一般的です。混合ワクチンは、複数の病気のワクチンが組み合わせてあり、一度に接種できます。
何種類混合のワクチンを接種すればよいかを決めるときには、様々な要因を考えます。室内犬か室外犬か、ドッグランやペットホテルなど多くの犬が集まる場所に行くことがあるか、野山に入ることがあるか、また飼っている地域ではどんな病気が流行しているかなどなど。獣医さんと相談して接種内容を決めましょう。

ワクチン接種によって予防できる犬の感染症は、以下のとおりです。

(1)犬パルボウイルス感染症:犬パルボウイルスに感染した犬の便や嘔吐物に接触して感染します。激しい下痢や嘔吐、発熱、脱水症状などが表れ、重症になると血便が出ることもあります。また下痢や脱水の悪化によりショック症状を起こして死に至ることもあり、特に子犬の致死率が高くなっています。妊娠中のメス犬が感染すると、流産や死産の原因になります。

(2)犬ジステンパー:犬ジステンバーウイルスの感染によっておこる急性で高熱のでる感染症で、伝染力が強く、死亡率の高い伝染病です。感染した犬の目やに、鼻水、唾液、排泄物との接触やくしゃみなどの飛沫物によって感染します。初期症状は目やに、鼻水、鼻炎、発熱、食欲の低下などで、重篤化すると麻痺や痙攣などの症状が出ます。致死率が高く、発症すると有効な治療法はありません。治ったとしても、神経症状などの後遺症が出ることがあります。

(3)犬伝染性肝炎:犬アデノウイルス1型の感染によっておこる感染症で、伝染力が強く、感染した犬の鼻水や唾液、排泄物に接触することで感染します。発熱や嘔吐、下痢、腹痛などの症状が表れ、急性の肝炎になります。鼻水が出る程度の軽症こともありますが、混合感染があると死亡率は極めて高くなります。回復しても半年以上ウイルスが腎臓にいて、尿中に排出されますので注意が必要です。

(4)犬伝染性咽頭気管炎:犬アデノウイルス2型による感染症で、「ケンネルコフ」という強い咳がでる犬の呼吸器病の主な原因のひとつです。咳やくしゃみなど風邪に似た症状が出ます。1型の犬伝染性肝炎よりも症状が軽く致死率も低いとされていますが、他のウイルスや細菌との複合感染により重篤化する場合もあります。

(5)犬パラインフルエンザウイルス感染症:「ケンネルコフ」の主な原因のひとつで、咳や発熱、鼻水などの重い風邪のような症状が出ます。単独での致死率はあまり高くありせんが、他の感染症との混合感染で症状が重くなります。

(6)犬コロナウイルス感染症:感染した犬の嘔吐物や糞便をなめたりすることによって感染します。幼犬には下痢と嘔吐を起こしますが、成犬の場合は感染してもほとんど症状が現れません。幼犬で症状が重くなると、血便がでることもあります。犬パルボウイルスなどと混合感染すると重篤になることがあります。

(7)犬レプトスピラ症:レプトスピラという細菌に感染した動物の尿で汚染された土や水を口にしたり、また触れたりすることで感染します。症状が出ない「不顕性」、高熱、腎炎、出血性胃腸炎、血便などになる「出血型」、高熱、黄疸、尿毒症などになる「黄疸型」があり、人間にも感染する人獣共通感染症です。また、レプトスピラには多くの血清型があります。

ワクチンによる免疫は一生続くわけではありません。ワクチンの種類によっても異なりますが、複数回の接種が必要です。一般的には、生後2ヶ月の段階で第1回目を、その1ヶ月後に第2回目を行い、成犬になってからは年に1回の追加接種することが多いです。ワクチンによっては子犬期に3回接種することもありますし、コアワクチンの追加接種は3年に1回でよいとしている場合もあります。

前回も書きましたが、ウイルス感染症には抗生物質は効きません。感染してしまったら特効薬はありません。取り返しのつかないことになってしまう前に、定期的に予防接種を受けましょう。

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ペット衛生管理の豆知識:犬用ワクチン1

ウイルスには抗生物質が効きません ワクチンで予防しましょう

ワクチンとは感染症の予防に用いる医薬品のことで、病原体あるいは細菌毒素の毒性を弱めたり失わせたりしたものです。これらをあらかじめ接種しておくことにより病原体に対する抗体を産生させ、体内に免疫反応の記憶を残すことにより、いざ本当の病原体が体内に侵入してきたときに迅速に免疫応答が働き、病原体の感染や発病を防げるようになります。

犬用ワクチンは、すべての犬に接種した方がよい「コアワクチン」と、感染のリスクに応じて接種する「ノンコアワクチン」に分けられます。

「狂犬病ワクチン」は、犬用コアワクチンの中で唯一接種が義務化されているワクチンです。狂犬病予防のために、生後3カ月以降のすべての犬に対し、年1回の接種が義務付けられています。なぜ、狂犬病ワクチンだけが義務付けられているのかというと、それは狂犬病を発症した場合の致死率がほぼ100%というとても怖い病気だから。さらに狂犬病を発症した犬に噛まれると、犬だけではなく人間にも感染・発症するとても恐ろしい人獣共通伝染病だからです。

「犬ジステンパーウイルス」「犬パルボウイルス」「アデノウイルス1型(犬伝染性肝炎)」のワクチンも、コアワクチンです。これらは義務ではないものの、感染率と感染後の致死率が高いことから、すべての犬へワクチン接種することが推奨されています。

ノンコアワクチンは、生活環境(多頭飼いなど)や、病原体の汚染地域かどうかなどにより、高い感染リスクが想定される場合に接種するもので、「レプトスピラ」「パラインフルエンザウイルス」「コロナウイルス」などがこれに当たります。

上記の病原体はほとんどウイルスですが、レプトスピラだけは細菌です。
レプトスピラが入っている混合ワクチンは副作用が出やすいことが知られています。レプトスピラ感染症も人獣共通伝染病ですし、発生報告のある汚染地域では本来接種をすべきですが、ワクチンアレルギーを起こす体質の子や、特にミニチュア・ダックスフンドなどでは副作用が強く出る場合がありますので、接種には注意が必要です。獣医師と相談して、その子の体質、飼育環境、生活環境、感染リスクなどを考慮した上で、レプトスピラが入ってないワクチンを接種するか、レプトスピラが入っているワクチンを接種するか選びましょう。

ドッグランやペットホテルなどの犬の集まる施設では、3種以上の混合ワクチンの接種証明書の提示を求められることが多くなっています。ウイルスに対する抗体持続期間から、コアワクチンの接種は3年に1回でもいいとの報告もありますが、接種1年以内の証明書の提示を求められる場合が多いと思いますので、心配な場合は事前に施設へ確認しておきましょう。証明書はワクチン接種を受けた動物病院で発行してくれます。

ワクチンは、感染症予防において最も重要かつ効率的な手段です。特にウイルス性感染症には抗生物質が効きませんので、かかってからの治療より、ワクチンによる予防が非常に重要です。ワクチンをあらかじめ打っておけば、感染症の発症予防、症状の軽減が大いに期待できますので、ワクチンで予防できる病気はワクチンの接種を検討しましょう。

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ペット衛生管理の豆知識:抗生物質の重要性

細菌感染症の治療に抗生物質は必須です

ペットの調子が悪くなって動物病院に連れて行くと、よく抗生物質が処方されます。もちろん私たち人間にも抗生物質はよく使われます。でも抗生物質って、病院に行かないと手に入りませんよね。どうしてでしょう? 今日は抗生物質のお話です。

抗生物質とは本来、微生物がつくる天然の抗菌作用をもつ物質のことで、その化学構造から人工的に合成されています。抗生物質には、細菌を殺す殺菌作用と細菌の増殖を抑える静菌作用があり、この作用で病気を治します。基本、細菌にしか効きません。

抗生物質を使う目的は、病気を起こす原因となっている細菌を抑えることです。抗生物質が発見されたおかげで、医療はとても進歩しました。それまでは死亡するのが当たり前だった細菌性の病気にかかっても、抗生物質のおかげで命が助かるようになったんです。さらに抗炎症薬などの薬と抗生物質を組み合わせて使用すれば、治療効果は一層高まることがわかっています。

通常の診療では、動物にも人にも、様々な病気の治療に抗生物質が使われています。細菌感染による炎症(肺炎、膀胱炎、皮膚炎など)、細菌による二次感染のおそれのある外傷や手術後なども、抗生物質は投与されます。抗生物質はウイルスに対しては効力がありませんが、細菌との混合感染やウイルス感染後の二次感染を予防する目的で、ウイルス感染症に対しても使われます。また以前には、家畜の飼料に添加物として飼料にまぜて食べさせ、微生物を抑えて成長促進させるためにも使われていました。

ちなみに、細菌には抗生物質が効きますが、ウイルスだけに効く薬はほとんどありません。細菌は栄養や条件がそろえば単独で増殖できますが、ウイルスは宿主の細胞に入り込み、宿主の細胞システムを利用して増殖します。宿主を攻撃するわけにもいかず、特効薬のないウイルス感染症の治療には、症状に対して治療する対症療法が中心となっています。

抗生物質には、数種類の細菌にしか効かないものもあれば、幅広い多くの細菌に対して効くものあります。病原体の細菌が分離できれば、その細菌に対する抗生物質の感受性試験を実施して、感受性のある薬剤を使うことが推奨されていますが、医療の現場で治療を始めるときにまだ原因の細菌がわからないことが多いため、幅広い細菌に効力の高い抗生物質が使われることが多くなっています。

なくてはならない抗生物質ですが、病院に行って見てもらわないと手に入りません。それはなぜでしょう。細菌感染症に対して抗生物質は必須ですが、抗生物質の使用にあたっては注意が必要だからです。

ペニシリンショックのようにショック症状を引き起こすこともありますし、口から飲む場合には腸内細菌叢のバランスがくずれて下痢などがおきることもあります。また、むやみに抗生物質を多用すると、細菌がその抗生物質に対して耐性をもって効かなくなったり、抗生物質が効かない新しい細菌(耐性菌)が出現したりします。
「生死にかかわる病気のときに効く抗生物質がない!」これは医療にとって脅威であり、大きな社会問題になっています。抗生物質を安易に乱用すれば、このような事態になりかねません。

以上のようなことから、抗生物質の使用にあたっては慎重さが求められています。ペットの病気については、獣医師がその動物を実際に診察して、その都度必要な抗生物質を必要な量だけ処方することになっています。くれぐれも自分判断での使用するのはやめましょう。

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ペット衛生管理の豆知識:高齢ペットへの配慮

高齢ペットが快適に暮らせるように

かわいいペットが年をとって弱っていくのを見るのは辛いものです。以前のように言うことを聞いてくれなくなったり、反応が鈍くなる場合もあります。でも飼い主さんが苛立ったりしてはいけません。年老いたペットには、静かで暖かい休息場所、心地よい寝床、新鮮な水と栄養価の高い食事、使いやすいトイレを用意してあげましょう。

〇視力が衰えてよく見えていないと思われる場合は、家具の角などにぶつかると危ないので、危険な場所にはクッション材を貼る、いつも通るところには物を置かないなど、配慮してあげましょう。また、ペットは家具の配置などを感覚で覚えているため、室内の模様替え(配置換え)をしないことも大切です。

〇聴覚の衰えで、名前を呼んでも反応しない場合は、急に触ると驚かせてしまうため、ペットの見える方向から近づくようにしましょう。

〇視力や聴力の衰えで、ペット自身も強い不安を感じているはずです。眠っている時間が多くなるペットですが、優しく声をかけたり、体を触ってマッサージしたりなどのスキンシップをたくさんしてあげましょう。ペットの不安も和らぐはずです。

〇食事を見直して、高齢ペットに適した食事を与えましょう。少食の高齢ペットには、少量でも高エネルギーの食事を検討しましょう。
痩せて食が細くなり食欲がないペットには、まず食べてもらうことが第一です。食べることができなければ、ペットはどんどん衰弱していってしまいます。そんなときは、栄養バランスを気にするより、ペットの好きなもの(食べれるもの)を好きなだけ食べさせましょう。

〇足腰が弱くなったペットが家の中で足を滑らせないような工夫が必要です。滑らないカーペットの使用等を考えましょう。また、眠っている時間が長くなりますので、心地よい寝床を作ってあげることも大切です。

〇粗相をしてしまう場合も増えるので、専用のカーペットなど、頻繁に交換したり、洗えるタイプの製品の利用も考えましょう。よく通るところにトイレを増やしてあげるのもいいかもしれません。マナーベルトやオムツも上手に利用しましょう。人間用の尿取りパッドも役に立ちます。

〇口臭の原因になる歯周病は、高齢犬がかかりやすい病気です。日頃から歯や歯茎など口の中全体をチェックしておきましょう。

〇皮膚が乾燥してかたく厚くなるためかゆみを生じやすくなり、加齢によって皮膚に腫瘍を生じやすくもなりますので、頭部や顔首の周囲をチェックしてあげましょう。ただし、シャンプーのし過ぎはよくありません。

〇老犬の散歩には、散歩用ハーネスが有効です。ハーネスにリードをつけてつり上げるようにして立たせ、犬がゆっくり歩けるように介助してあげましょう。適度な運動にもなり、ストレスの解消にもなります。

〇ペットの寿命が延びていますので、介護を必要とする高齢ペットも増加しています。介護の期間が長くなると、飼い主自身の疲労も蓄積してしまいます。できれば介護に協力してくれる人を確保しましょう。介護をお願いできるペットシッターを利用するという手もあります。

この他、年を取れば、骨折しやすくなったり、関節炎になりやすくなったり、糖尿病や腎臓病などの病気になることも多くなります。

ペットの年齢や状況によって、私たちの接し方も変えていく必要があります。食欲、行動、歩き方、1日の時間の過ごし方などで、元気なときとは違う変化や異常があれば、すぐ気づいて対処してあげましょう。

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ペット衛生管理の豆知識:ペットの老化のサイン

老化のサインに早めに気づいてあげましょう

まだやんちゃな子どもだと思っていても、ペットはいつのまにか大人になり、あっという間に年を取っていきます。毎日一緒にいると、少しずつ進行していく小さな変化に気づきにくいものですが、大切なのはペットの老化のサインを見逃さないことです。できるだけ早く気づいて、ペットが快適に暮らせるようにサポートしてあげましょう。以下が、ペットに見られる主な老化のサインです。

筋力が弱まる:足腰などの筋力が衰えるため、歩くスピードが遅くなったり、動きが鈍くなります。犬の場合は散歩を嫌がったり、長時間の運動を嫌がったりします。犬は後ろ脚から衰え始めますので、歩くときヨロヨロしたり、腰がくだけて座り込んだりします。
また、階段の上り下りがゆっくりになり、ちょっとした段差でも躊躇したり、つまずくようになります。筋肉の衰え以外にも、関節の痛みや足腰の不調などが原因のこともあります。
筋力の衰えは全身にも現れ、体に張りがなくなり、体力が衰えてきます。

視力や聴力が衰える:年をとると、視力が低下しますので、物によくぶつかるようになります。聴力も低下しますので、名前を呼んでも反応しなくなることがあります。

皮膚や被毛が変化する:ふんわり艶やかだった被毛が艶を失ったり、ひげや耳の周囲の毛が白くなったりします。また、皮膚は乾燥してかたく厚くなるため、かゆみを生じやすくなります。

食欲が変化する:高齢になると、同じ食事でも太ったりします。逆に老化が進んでくると食欲が減退して痩せてきたりします。味覚や嗅覚が変化して、好みが変わることもあります。好き嫌いがひどくなることもあります。ホルモンの病気が原因のこともありますので注意が必要ですが、食に変化が表れるのも老化のサインです。

睡眠時間が増える:年齢を重ねるにつれ、睡眠時間が長くなる傾向にあります。夜だけでなく昼間も眠ることが多くなってきたら、それは老化のサインです。好奇心も薄れ、お気に入りのおもちゃなどにも興味を示さず、眠ることを優先するようになります。

粗相が増える:年を取ったペットが粗相をするのは、膀胱にためられる尿の量が減少したり、トイレまで間に合わなかったりするためです。腎臓に異常があることもあります。

口臭がきつくなる:老齢ペットだけではありませんが、口臭がきつくなった場合は、歯周病にかかっている可能性があります。歯周病は高齢ペットがかかりやすい病気です。

老化と老齢ペットの病気とは別です。老齢ペットの病気は症状が少しずつ進行することも多いため、健康診断を受けないと気づけない場合もあります。病気を見落とさないようにするためには、血液検査も含めた定期的な健康診断が必要です。

次回は、ペットに老化のサインが見られた場合に、ペットが快適に暮らせるようにするための工夫です。

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ペット衛生管理の豆知識:犬猫の年齢

ペットの人間換算年齢を知っておきましょう

「この子は人間で言うと何歳ぐらいになるんだろう?」 ペットの人間への換算年齢、是非知っておいてください。犬や猫の年齢を人間に換算すると下表のようになります。もちろん目安ですので、犬種や個体差、飼われている生活環境によっても違いはでてきます。

犬の寿命は15年弱。大型犬の方が小型犬よりも寿命が短い傾向にあるようです。これは、大型犬の方が小型犬より成長スピードが速く、大きな体を維持するために体への負担が大きくなっているためと考えられます。
一般的に、小型犬・中型犬は1歳で人間に換算すると17歳位になり、その後1年ごとに人間の4年分成長するといわれています。大型犬では2歳で20歳位、その後は1年を人間の7年として計算します。
何歳からシニア犬(老犬)、というはっきりとした定義はありませんが、小型犬・中型犬で8歳位、大型犬では7歳位からです。老化は見た目や行動にも出てきますが、犬の人間への換算年齢を意識することで、老化のサインに早めに気づいてあげられ、年齢に合ったケアをしてあげることができます。

猫の寿命はだいたい15年。最近では20年以上生きる猫も少なくないようです。このうち、家の外に出る猫より外に出ない猫の方が、交通事故や感染症のリスクが少ないため、長生きする猫が多いようです。
猫の人間への換算年齢も、小型犬とほぼ同じです。猫も1歳で人間に換算すると17歳位になり、そこからは1年間で約4歳ずつ歳をとっていきます。猫も7歳位から徐々に老化が始まります。11歳は人間でいう60歳位。白髪が増えたり、動きがゆっくりになったりしてきます。

犬や猫たちは、1歳から1歳半を過ぎたらもう立派な大人です。そうして飼い主の年齢をあっという間に追い越していきます。
いつまでも永く一緒にいたいなら、バランスの摂れた食事や体重管理で太り過ぎに注意し、適切なワクチン接種を行ったり、体を触ってあげたりなど、日々の健康管理をしっかりしてあげましょう。 そして、人間への換算年齢を意識することで、成長や老化など、年齢に合ったケアをしてあげましょう。

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